企業に本当に必要な保険はこれだ!リスク量の算出方法
企業が抱えるリスクと、それを保障するために必要な保険料の求め方について解説します。
もくじ
企業のBCP(事業継続計画)
法人生命保険とは、BCPの一部です。BCPとは何でしょうか。中小企業庁のHPより抜粋しました。
「BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
中小企業庁 中小企業BCP策定運用指南より抜粋
緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことがきでなければ、特に中小企業は、経営基盤の脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます。
緊急時に倒産や事業縮小を余儀なくされないためには、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることが重要となります。こうした企業は、顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることとなり、株主にとって企業価値の維持・向上につながるのです。」
つまり、「会社の信用を失わないように、普段から緊急事態に備えておきましょう」ということです。その計画がBCPです。
企業を取り巻くリスク
リスクを分類すると、戦略リスク・財務リスク・ハザードリスク・オペレーショナルリスクに分けられます。これらのリスクに対してどう対処するかが経営です。
保険でヘッジできるのは、下記の表の「ハザードリスク」と「オペレーショナルリスク」です。
社長が無事に勇退する場合は計画的に事業承継がなされますが、突然死亡した場合には、突発的に事業承継が行われます。その為にどんな準備をしておくのか?その対策を生保版BCPと呼びます。
大分類 | 小分類 | リスク |
---|---|---|
戦略リスク | ビジネス | 新規事業・設備投資 |
企業買収・合併 | マーケティング | 宣伝・広告の失敗 |
価格戦略の失敗 | 人事 | 従業員の雇用調整 |
従業員の高齢化 | 経済 | 景気変動 |
原料・資材の高騰 | ||
財務リスク | 資本 | 資金計画の失敗 |
金銭支援の停止 | 流動性 | 運転資金の不足 |
黒字倒産 | 資産 | 株価変動 |
時価・不動産価格変動 | 決済 | 不良債権・貸し倒れ |
取引先の倒産 | ||
ハザードリスク | 自然災害 | 地震・津波・噴火 |
風災・水災・落雷 | 事故 | 建物の火災・爆発 |
交通事故・労災事故 | 故障 | 機械設備の故障 |
停電・断水 | 情報システム | システムの誤作動 |
サイバーテロ | ||
オペレーショナルリスク | 製品・サービス | 製造物責任 |
事務ミス | 法務・労務 | 知的財産権・著作権 |
役員賠償責任 | 労務人事 | 過労死・安全衛生管理 |
ハラスメント | 経営者 | 経営者の死亡・執務不能 |
乱脈経営・粉飾決算 |
リスク量の算出
ハザードリスクは主に損害保険の分野であり、保険会社のコンサル子会社がリスク量の算出を行います。では生保版BCPの場合はどのように誰が行うのでしょうか?
それは現場で個々の生保営業マンが算出するのですが、これが機能していないのが現実です。
算出する方法は下記のとおりです。
- 現状の財務の改善に必要な資金量の把握
(現状の貸借対照表から次の経営者が経営しやすい資産・負債バランスに改善するには注入すべき資金量はいくらなのか?) - 新経営者での売上予測や売上総利益率や営業利益額の予測に基づき、不足する資金量の把握
- 1と2を合計して必要な資金量を算出
(この金額が、生命保険で言う必要保障額です。)
保険料の額も、経営を圧迫することのない範囲でないといけません。
基本的に営業キャッシュフローから財務キャッッシュフローをマイナスした残りの一部となります。
適正な保険料を算出するには、決算書をよく見る必要があるということがお分かり頂けたでしょうか。
実際にヒアリングした企業では、算出キャシュフローを意識せず、適正額以上の保険料が組まれているケースをかなり多く見かけます。そうすると財務キャッシュフローが増加し、長期借入金を増やして保険料を払う事になります。保険を掛ける為に借金をするという本末転倒が起きています。
生命保険業界の課題
生保版BCPを行うにはリスク量の算出が不可欠です。それには担当営業社員が決算書を読み、経営の予測を財務的に行える必要があります。
しかし残念ながら、決算書を見て保険提案をする営業マンはほとんどいません。その結果、必要保障額も適正な保険料も算出されることなく保険商品が提供されているのが現状です。
教育の重要性
生保版BCPを行える保険マンの教育が重要であり、それは生命保険業界が魅力ある業界になるポイントです。
また、営業成績の柱にもなります。「生命保険大学校」は、その為の知識や経験値やエッセンスを学べる機関です。教育する分野が広いことに加え、馴染みのない財務の知識を習得するために授業期間は2年間を要します。授業の在り方は、まず財務の知識を習得し、その後は実事例研修を繰り返します。「習うより慣れよ」をモットーに、体験しながら技術を修得していきます。